アイスクリーム
愛犬の散歩途中、リードに繋がれていない犬がいた。
「野良犬かな?」とも思ったが、今時いないだろうと思い、
飼い主が近くにいるのか探したが、見当たらなかった。
いずれにしても危ないので急いで家に帰り、リードと首輪とお菓子(チュール)を
持ち自転車で出動した。
近所に住む、けん君がいたので「迷子の犬、見なかった?」と聞くと
「見てないよ。どうしたの?」と言い、訳を言うと、
「僕も一緒に行く!」と言った。
「危ないな。」と思ったが、けん君家に最近まで犬が居たのを思い出し、
「よし!一緒に探しに行こう!」と言い、一緒に自転車で走り出した。
けん君が勢いよく行くので、慌てて追い抜かし
「けん君、おじさんの後に付いてきて!」と言うと
「分かった!」と大きい返事が返ってきた。
数分後、前方に犬を発見した。
「けん君、居た!」と言い、自転車をおり近づきチュールを差出し、
「おいで!」と言ってみると、近づいてはくるが、警戒して逃げてしまう。
それを何回か繰返すが捕まえられなかった。
そうこうするうちに、犬が交通量の多い大通りに出そうになったので、
「けん君!来て!」と叫び、2人で急いで自転車で走り出し、
無理やり2人で自転車で犬を囲い、大通りに出るのを止めた。
トラックが勢いよく近くを走り抜けた。
間一髪であった。
何とか止めることは出来たが、捕まえられずまた逃げてしまった。
犬は駅前の方に走りだし、ついに見失ってしまった。
「あ~居なくなっちゃったな。」と振り返ってけん君に言うと、
「さっきあの家入って行った気がする。」といい、民家を指差した。
その家の前に行き。
「よし!この家の人に言い。庭を見せてもらおう。」とけん君に言うと、
「絶対に居る!」と言った。
チャイムを鳴らすと、80歳位に腰の曲がったおばあちゃんが出て来て
「あの~すいませんが、どこの犬だか分かりませんが、外をウロウロ走り回っていたので捕まえようと追いかけていたんですが、どうもお宅に入ったようなので、すいませんがお庭に入らして貰って探してもいいですか?」
「あら!そうなの!大変!どうぞ。捕まえられるといいわね?」とおばあちゃん。
庭に入り、逃げないように門を閉め探すとすぐに犬を発見。
「あの犬です!」とおばあちゃんに言うと、
「え。あれウチの犬よ。」
けん君と数秒見つめ合い、お互い状況を理解し、おばあちゃん家を後にした。
帰り道、市内で1件しかない駄菓子屋でアイスクリームを買い、
けん君と並んでベンチに座り、笑いながら今さっきまでの出来事を話した。
俺が「おばあちゃん、ちゃんとリードつけて飼わないと駄目だよな!」と言うと
「でも、見つかって良かったよ!」とけん君が言った。
けん君がとても頼もしく見えた。
そして早く帰って愛犬に会いたくなった。